クルアーンと新約聖書には、イエス(イスラム教ではイーサー)の生涯に関するいくつかの共通したエピソードがありますが、それぞれの宗教での詳細な解釈には違いがあります。以下は両方に共通する主要なエピソードです:
1. イエスの誕生
新約聖書:マリアが聖霊によって妊娠し、イエスがベツレヘムで誕生したとされています(マタイ2章、ルカ2章)。
クルアーン:マリアが神の命令でイエスを妊娠し、神の助けを受けて奇跡的に出産したことが記されています(クルアーン3:45-47、19:16-22)。
2. 奇跡的な治療
新約聖書:イエスは病人を癒し、盲人や足の不自由な人々を治す奇跡を行ったとされています(マタイ4:24、ルカ7:21-23)。
クルアーン:イーサーも神の許しを受けて病人を癒し、盲人を治し、死者を蘇らせるとされています(クルアーン3:49、5:110)。
3. イエスの弟子たち
新約聖書:イエスは12人の使徒を選び、彼らに教えを伝えました(マタイ10章、ルカ6:12-16)。
クルアーン:イーサーの弟子たち(ハワーリーユーン)は彼を支持し、神の道を広めるためにともに働いたと記されています(クルアーン3:52、5:111)。
4. イエスの昇天
新約聖書:イエスは十字架で死んだ後、復活し、弟子たちの前で昇天したとされています(使徒1:9-11)。
クルアーン:イーサーは十字架で死なず、神によって天に引き上げられたとされています(クルアーン4:157-158)。復活の概念はありませんが、終末の日に再び地上に戻るとされます。
5. 神のメッセージを伝える
新約聖書:イエスは神の王国、悔い改め、愛の教えを伝えました(マタイ5-7章、ヨハネ13-15章)。
クルアーン:イーサーは神の言葉を伝える預言者として、信仰と善行の重要性を説きました(クルアーン3:50-51、5:110)。
これらの共通点においても、クルアーンと新約聖書はそれぞれ異なる解釈を提供します。特にイエスの死と復活に関して、クルアーンではイーサーの死は否定され、彼は天に昇ったとされる一方、新約聖書ではイエスは十字架で死んで復活したとされています。
はい、クルアーン(コーラン)は114章(スーラ)から成り、それぞれの章に名前がつけられています。名前は多くの場合、その章の内容に関連したキーワードや重要なテーマから取られています。たとえば、「牛の章」(Al-Baqarah)は、クルアーンの第2章で、聖書の時代の話や律法に関する内容が含まれ、特に「牛の物語」が登場します。
他の章の例としては:
アーラ・イムラーン(Al-‘Imran) – 「イムラーン家族の章」
マイダの章(Al-Ma’idah) – 「食事の章」
アフワールの章(Al-Ahqaf) – 「砂丘の章」
ファーティハ(Al-Fatiha) – 「開かれた章」
名前はその章の中心的なテーマや物語を反映していますが、全体的に神の言葉や教訓が述べられているという点で一貫しています。
クルアーンの編纂に関して、考古学的および歴史的な観点から次のように理解されています。
クルアーンの編纂時期
クルアーンの啓示は、ムハンマド(西暦570年頃–632年)の生涯の間、610年から632年の間にわたって行われたとされています。ムハンマドが受けた啓示は、約23年間にわたって断続的に神からの命令として彼に伝えられました。この期間に受け取った言葉がクルアーンの内容であり、ムハンマドの死後にそれらの言葉がまとめられました。
クルアーンの編纂
ムハンマドが生きている間は、啓示は口頭で伝えられ、多くの信者がそれを記録していたと考えられています。また、ムハンマド自身も一部を記録したとされますが、基本的には信者たち(特に「ハフィズ」と呼ばれる記憶力に優れた人々)がその言葉を暗記していました。ムハンマドの死後、クルアーンの編集が行われました。
初期の編纂(ムハンマドの死後):ムハンマドが死んだ後、特にアブー・バクル(最初のカリフ)とその後のカリフたちの下で、クルアーンの文書化が急がれました。クルアーンの断片や記録を集め、最初の形が作られたのは西暦633年頃とされています。
最終的な編纂:クルアーンの最終的な編纂は、ウスマーン(第三代カリフ)の時代に行われ、650年頃に標準的なテキストが確定しました。この際、異なる方言や読み方のバリエーションが統一され、公式のクルアーンが完成しました。
クルアーンの編纂者
クルアーンの編纂はムハンマドの弟子たち(サハーバ)によって行われました。
特に、ムハンマドの死後、アブー・バクルとウスマーンのカリフたちの指導の下で、ムハンマドの言葉を集めた作業が進められました。編纂に関与したグループとしては、主に以下が挙げられます:
アブー・バクル:最初のカリフとして、クルアーンの記録を集める作業を指導しました。
ウスマーン:彼の時代に、異なるバージョンのクルアーンが統一され、最終的な標準テキストが作られました。
ザイド・イブン・サビット:ウスマーンの命で、クルアーンの編纂を実際に行ったとされる人物で、ムハンマドの時代から信頼されていた記録者の一人です。
これらの人物やその周りの信者たちが、ムハンマドの啓示を集め、整理し、最終的なクルアーンの形を作り上げたと考えられています。